buried alive (生き埋め日記)

日々の生き延び・魂の暴れを内省的にメモる。twitter→@khufuou2

町田康の音楽ライブ 19.6.6 @得三 (名古屋市)

名古屋市 今池にあるライブハウス『得三』で町田康さん率いるバンド『汝、我が民に非ズ』の2nd アルバム発売記念ライブがあったので、観て聴きに行きました。

松本駅から高速バスに乗ること約3時間、名古屋市の中心部・栄で降車。私は過去に6年ほど名古屋に住んでいたことがあり、懐かしいし折角の機会だからとあえて早めに到着してウロウロしていたのですが、そのことはまた別に記事を書こうと思います。

勝手知ったる東山線今池駅に到着。宿は何ヶ月も前から予約してあったホテルルートイン今池に抜かりなくチェックイン。少し休んでから会場の『得三』に向かう。まだ開場まで40分あるから人影はほぼ無し。お店の人が入り口にスタンバイしていたので予約済みのチケットを引き換えてもらいました。

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お店の人が受付しつつ吸ってたタバコがハイライトだったのがなんとなく印象に残りました。このラフさ、いい感じです。

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入り口の案内書き。

都内でひらかれるライブだと予約時点で早々にチケットが売り切れてることが多い印象ですが、開催が名古屋かつ平日ど真ん中の夜だからなのか、まだ当日券の余裕があるみたいでした。

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整理番号9番と、今までお目にかかったことがない最初の方の数字なので期待が高まります。都内のライブって開場待ちの時に所在ない感じになることが多いのですが、今回は人通りが少ない上にお店の向かい側の壁に縁がでっぱってて座って待つのにちょうどいいあんばいでした。ちらほらと人が集まってくるのをしり目に壁際に腰掛け悠々とKindleを読んでいると、同じくひとりでライブを見にきたらしい女性が横に座り気さくに話しかけてきてくださいました。(以後この方をTさんとします)。Tさんは今回の名古屋に加えて翌日の大阪でのライブも観に行くらしく…なんという情熱&タフネス!

開場して中に通されたら、そこはごく小ぢんまりとした会場。なんと最前列のど真ん中に陣取ることができ、嬉しいやら緊張するやら。ステージが近い!!

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ぜんぶ立ち席かと思いきや、ステージから見て左側の壁際に沿ってテーブルと椅子が並んでいて残りが立ち席というなんだか謎な配置でした。開場から開演まで1時間あったので、物販コーナーで先行発売されていた2ndアルバムを買ったり、隣り合ったTさんと色々話したりしてました。十代の頃地方住まいだった彼女は好きだったとある小説家の講演会に行くことを夢見て進学先の土地を決め、まさに受験会場に向かう途中その小説家の訃報をきくという経験をしたのだそうで、それ以来「好きな作家やアーティストが生きていて会える機会があるうちに積極的に会いに行こう」と思って行動しているのだそうです。なんだかこのお話にはとても感じ入ってしまいました。

 

そうこうしているうちに開演、バンド登場。町田さんは全身黒でキメていて、ドクロのタンクトップ、左右の身頃にギターが描かれたシャツ、サルエルパンツにブーツ、首元にチラリと光るネックレスといういでたちでした。

町田さんはライブの時は紙の歌詞を見て歌うし紙のメモを見て曲の合間のトークをするスタイルなのですが、まず情熱的に2曲ほど歌ってから

「あのー、うっかりトーク用のメモをホテルに忘れてきてしまいました…」とボソッと言ったのが可笑しくてみんな大笑いでした。いつもよりフワフワした感じのトークも面白かったですし、演奏と歌の調和もいつも通り素晴らしかったです。ノリノリでアッパーな感じの曲もあり、変調子でジャズっぽいまったりした感じの曲もあり。幾重にも重なった楽器たちの音色と町田さんのボーカルの奥行きと歌詞の言葉の響きが織りなす妙なる世界はどこまでも広がっていき、お客はみんな夢中で聴き入り、リズムに合わせて躍動していたのでした。町田さんの小説の中で、音楽に合わせて無心に足踏みする様子を「阿呆が麦踏みをしているよう」と表現していたことがあって私はそれを思い出して「今の私も阿呆が麦踏みをしている感じに見えるのかな」なんて愉快に思いながら曲を聴いてました。

 

2ndアルバムの曲目です。

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どの曲も素晴らしいのですが、私はテンポの速い曲がより好きです。

『神様が掘った穴』、『踊り狂う君ダウン花を抱いて儲けなしでターン』、『牛飼童』なんかがノリノリで良いです。

あー、でも『夏服の女』の明るい旋律にのせて「花は滅んでやばいくらい空が青い(中略)破れ傘を吁差してる夏服の女」と展開する叙情的な歌詞世界も捨てがたいし、

『土の記』の静かな導入部から後半にかけてだんだん「わだだっわだだっわだわだわだ」と大きくうねって盛り上がる感じも壮大でしびれるし、

うーんうーん…

全曲おすすめです。ははは。

 

ただ、私が特に好きな『あの日の豚にチャーハンやれよ』っていう曲が収録されてなかったのが残念ですね。あとは『縁(えにし)の芽生え』とか。とにかくこのバンド、曲が多いんですよねー。いつか全曲CD化されるのだろうか。期待してます。

いちばん最後にINU時代の『つるつるの壺』をやってくれたのがサイコーに盛り上がりました。

 

あとなんだろうなー。

トークで面白かったのは旅行中の荷物を持て余す話とか(猿股とか古風な言葉を突如使うのが可笑しい)、昔のインタビューなんざ覚えてないのにインタビュアーは昔自分がやったインタビューの内容をこっちが記憶してる前提で話してくるから困るっていうボヤきとか、宮本むなしの話とか、町田町蔵時代?に名古屋でライブやった話とか、曲のタイトルのあれこれとか、俺は堂々とカンペを見るぞなぜなら誠実だから!みたいな話とか笑。町田さんは基本的にライブの曲目に絡めたトークをするんですけど、今回カンペを忘れてきてるので若干グダグダな喋りになっててそれもまた良かったですね。昔話になって、かなり古くからのファンとおぼしき人が観客席から「町蔵、なんとかかんとか」と昔の町田さんの芸名で呼びかけてた時に苦笑いして

「お互いのためにそういうノリはやめときますか」みたいに返してたのも面白かった。

 

さいごは、長丁場のライブで疲れているでしょうにファンのためにサイン会を開いて下さいました。私は少しでも町田さんと一緒の空間にとどまりたくてわざと後ろの方にゆっくり並んだりして…。

町田さんには過去に何度か読書会・講演会・サイン会で声をかけさせていただいててなんとなーく顔を覚えられているふしがあるので(※過去の町田さん関連のブログ記事参照)私の番が来たら目を見て「あ、こんばんは」と挨拶していただき天にも昇る心地でした。

今回は高速バスで来ましたと言ったら「長野県からだと名古屋に行くのと東京に行くのとどっちが遠いの?同じぐらい?」などと返していただきもう感無量です。こういう他愛もないやり取りをさせていただけることがもうありがたい…。しっかり握手&サイン頂きました。

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外に出たらTさんが待っててくださって、少しお話ししてから別れて宿に引き上げました。

色々と楽しすぎる名古屋の夜でした。