buried alive (生き埋め日記)

日々の生き延び・魂の暴れを内省的にメモる。twitter→@khufuou2

(おわり)20180922 町田康の講演「文学の面白さ」@NHK文化センターさいたまアリーナ教室

これが最後の話題である。繰り返すが、町田の流暢なトークを聴きながら必死に書き取った乱雑なメモと頼りない記憶をもとに書いているので多少の解釈違い、聞き間違い、思い違いは海容願いたい。

 

4. 古典のテーマにどう取り組むか・犬とか猫の語り口

...町田康は昔の時代を舞台とした創作でも知られている(『告白』『宿屋めぐり』『付喪神』『パンク侍、斬られて候』『ギケイキ』等)し、自身がともに暮らしている犬や猫をテーマにしたエッセイや絵本でも知られている(『スピンク』シリーズ、『猫にかまけて』シリーズ、『猫のエルは』等)。それらの作品の中から『パンク侍、斬られて候』『告白』を特に取りあげて古典にどう取り組むかといったこと、また、犬や猫を語り手に据えた場合の語り口についての考えを述べていた。

 

まず、大河ドラマへの違和感というものがある、と町田は口火を切った(いま書いてて気づいたがNHK主催の講演で大河ドラマに批判的な発言をしているのが面白い)。大河ドラマを見ていて、「上皇院政を布いたことがきっかけで摂関政治が始まりました」という説明があってそれは短絡的でおかしいんじゃないのかと思ったそうだ。何がおかしいかというと、歴史上の事柄を時系列に並べた結果だけを見て、事後的に語っているところがおかしい。まるで株の運用の結果論じゃないか。結果から逆算して「あんなことをしたアイツはアホだ」などとえらそうに断ずるのは簡単だが、当時の状況や人々の心境にもっとフォーカスするのが大事なのではないか、と語っていた。あとは、見取り図を描くようなことはせず手探りでやっていくのがいいらしい。また、昔の人や犬猫を自分とは違うものだと見なす意識を持ってはいけないとも。

 

えーと、町田康の講演は何度か聴いたことがあるのだが、大抵トークに興が乗り過ぎてスケジュール通りにいかず後半めちゃくちゃ駆け足になってぐずぐずになったり「ごめん、あとはいつか次の機会に話すわ」みたいになったりする。今回も終盤のメモはかなり駆け足感がある。あ、猫をテーマにした文が面白い人として保坂和志の名を挙げている。

パンク侍、斬られて候』は「正しいこと、正しそうなこと、正しさを追求したい人は正しいのか?」といった問いを念頭に書いたそうだ。所謂「正しさ」の嘘臭さ、パンクすなわち権威や伝統を疑うこと、がテーマらしい。

『告白』に関しては、河内音頭の話をしていた。町田は河内音頭も好きなのだが、河内音頭の決まり口上では自分をくさす・痩せ我慢する・身をやつす事と「とはいえ俺ってけっこうすごいかも」みたいな得意の絶頂感を行き来する様式美があって、それをおもしろいと感じているらしい。

 

ほんとはもっと話すことがありそうだったが時間切れとなってしまい、最後にこれだけ言わせて、と言っていたのが

・世界にはフィクションにも現実にもおさまりきらないものがあって、それを書くのが文学の醍醐味

・文章そのものに奉仕するつもりでおれは文章を書く

との言葉だった。

 

おわり