読書記録 『依存症のすべて やめられない気持ちはどこから来る?』廣中直行 著
廣中直行という医学博士が著した『依存症のすべて やめられない気持ちはどこから来る?』という本を読んだ。
前記事に読書記録を残してあるリンデンの『快感回路』と一緒に図書館から借りたものである。これはリンデンの著書と重なる部分もあり、よりとっつきやすい内容であった。依存症のメカニズムに加え、人が依存症に陥ってしまうさまざまな背景、なぜ依存症が問題なのかについて、さらに依存症の問題にどう向き合っていくべきかについても述べてある。この本では薬物やアルコールやギャンブルといったものに加え、買い物、人間関係、性暴力などの病的な行為も依存症の対象となりうることに言及していて興味深い。
まず導入部分で、人の心というものがいかに容易に傷つくものであるかを示した心理実験の内容が興味深かった。コンピューターの中の仮想プレイヤー2体と被験者とで擬似的にキャッチボールをするゲームを実施し、プログラム設定をいじって被験者にはボールが一切回ってこないようにするだけで被験者は傷つくのだという(所詮コンピューターゲームだという認識が被験者にあるにもかかわらず)。人間は生きる上でたくさんの傷を受けることは避けられないわけで、その傷を癒やそうとする過程で何らかの依存症に陥る危険性があるというわけだ。著者が本書で繰り返し「誰だってなんらかの依存症に陥る危険性を持っている」「依存症になるのは特別弱くてダメな人なんだという見方はやめてほしい」「潜在的な傷や問題を抱えているから依存症になってしまうので、依存症の人が抱えている根本的な傷や問題はなんだろう?と考えなくてはいけない」というメッセージを発しているのが印象に残った。