嵐の中の部屋で
疲れてたから思い切ってまとまった休みを取って沖縄に帰ってきているけど、「ちゃんと休めるのかな。ちゃんと開放された気持ちになれるのかな」という不安が頭をもたげてきて、夜あまり寝付けない。休めている気がしない。
台風とか気候変動が精神に作用して、それで気が滅入るのかもしれない。
空港のデッキでビールを飲んだときの写真。屋外でべこべこへこむプラスチックカップに入れて飲むビールはうまい。
茶が三啜りぶんぐらいしか入らない実に瀟洒・典雅なティーカップにぬくい紅茶をいれて飲んだ。
器に液体をいれて飲むのが肝要だ。器に液体が入ってさえいれば物事は成就する。そう祈って。そう言い聞かせて。
実に変な小説を読んでいる。冒涜的で支離滅裂で、でも最終的には全てこういうものに行き着くのだみたいな、おさまりかえった気分でもある。
はかがいかない気分のまま休暇を終えて日常に戻り、汚辱と塵芥にまみれて生きていくのか…みたいな気持ちになるのはとてもやりきれない。
日記でも書こうか。
百貨店で黒いルビーという名前の口紅を買った。
母は靴を、兄は部屋着を買った。
買い物の途中でアナウンスがあり、嵐のため営業は13時で終えると伝えられた。擾乱の予感。
スーパーマーケットでは早仕舞いのため半額値引きのシールが貼られた品物を持った人々が長蛇の列をなす。あんな行列見たことがない。
我々はマニキュアフィンガーという名前の実が細長くて奇妙な葡萄を買い求めた。バスは運休。道には自家用車があふれ、道ゆく人の傘は烈風で無慈悲に裏返る。
空気がぬるい。
薄荷の飴がべたつく。