buried alive (生き埋め日記)

日々の生き延び・魂の暴れを内省的にメモる。twitter→@khufuou2

中央線のきもち

大好きな町田康さんがNHKカルチャースクールさいたまアリーナ教室で創作論の講義をするというので聴きに行ってきた。

内容の詳細は書くと長くなるから明日以降まとめる。今回はとりあえず外出の記録だけ。一言でいうと、むっさ面白かった。

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さいたま新都心はビカビカに都会。

ビカビカにシャイニー。田舎者には眩しい。

興奮しすぎて1時間前に到着してしまった。教室に通されて、席が選び放題だったので迷わず最前列の左側に陣取った。日常的に講義を受けていた大学生時代からのお気に入りポジションである。

友人のNさんとも合流。Nさんはやたら小さいミネラルウォーターのペットボトルを持っていて「そんなサイズの水って売ってるんだ。薬とか飲みたい人向けなのかな」などと他愛もない会話をした。

質疑応答の時間に、いの一番に挙手して質問することに成功。町田康さん手ずからマイクを渡して頂き、もうそれだけで幸せになってしまった。

「古典を題材にした物語を書くときに善悪の二元論に陥らないように気をつけているとおっしゃったが、今よりちょっと昔に執筆された、現代が舞台の作品群(『くっすん大黒』とか『きれぎれ』とか)をつくる上でも同様の心配りをしていたのか。主人公が理不尽な目にあってのっぴきならない状況に追い込まれていく、という構図の作品が特徴的だったように思うのだが」

といった感じの質問をしたのだが、緊張して舞い上がっていたので答えをあまり覚えていない。主人公が巻き込まれる「理不尽な出来事」「のっぴきならない状況」を悪とするか善とするかだが、書き手としてはそういう主観を排除してニュートラルに描いたという点で古典題材の作品執筆と同じスタンスだと思います的なことを丁寧に答えてくださった気がする。

他の受講者もつぎつぎと質問していて「英米文学の翻訳家志望なのだが、幅広く色んな作品を読まなければならないと思うと茫洋たる気分になって途方にくれてしまう。こんな私にアドバイスはないか」→全てをカバーしようと思わず、得意分野を持つといいのではないか。プロの翻訳家として活躍している人は、そういう傾向にある。また、わからない・詳しくないことを力を尽くして工夫して表現するところに生じる味わいもあると思う。ていうか、ある意味書くことはすべて翻訳であるみたいなところもあるよね

 

「個を超越して書くことは、書き手が自分である以上難しいように思うのだが」→いったん書いてしまった文章は個を離れるもんなんですよ

的なやりとりをしていて興味深く拝聴した。どの質問にも丁寧に言葉を選んで説明を尽くしていたのが印象的だった。

 

会場では町田康さんの作品をいくつか販売もしていて、講義終了後に希望者はサインを貰えることになった。わたしは『ギケイキ』の文庫版をその場で購入してサインして貰った。他の人もその場で買ったり、あるいは自宅から持参してきたりと各々色んな著書を持っているのが興味深かった。さらりとお礼だけ言う人、今日の講義の感想を伝える人など様々だったが町田康さんはひとりひとりの顔をみて時折頷きながら丁寧に対応されていた。

私は今まで3回ほど都内のイベントに参加してサインをもらう機会があったのだが、いちばん初めのときに「長野県から来たんです」と言ったら町田康さんが「中央線で?」と返してきたのが妙に可笑しくてツボだったんです。交通手段重要か?と思って。

それ以来「長野県から来ました」というと絶対「中央線で?」と返してくださるのが面白くて毎回言うようにしてるんですね。なので今回も「長野県から来ました」と言って本を差し出しました。何か思い出したようで長野県…いやあれは山梨県かみたいな独り言を言いながらサインを書いてくださっているのに被せて「握手してもらってもいいですか?」とお願いしてみると、ああ、はいと少し笑ってペンを置きしっかり手を握ってくださいました。手、あったかかった!感激…。私の手、めちゃめちゃ緊張してたから冷たかったと思う。そして微笑んで目を見ながら優しい口調で「道中お気をつけて」と声をかけてくださったあといたずらっぽく「中央線で。」と付け加えたので、もう嬉しすぎて卒倒するかと思いました。

これは絶対覚えられてるっしょ!!私もういつ死んでもいい!!!

 

描写細かくて気持ち悪くてすみません、それぐらい町田康さんが好きなもので…しばらくこの思い出だけでつらい人生を生き抜こうと思います…。

Nさんも足繁く音楽ライブの方に通っているので「何度かお目にかかったことありますね」的な会話を交わしてました。イイナー。

 

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サインだよ

 

このあと立川の沖縄料理屋で飲みました

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中央線ラブ