buried alive (生き埋め日記)

日々の生き延び・魂の暴れを内省的にメモる。

町田康さんとの読書会で『前世は兎』を読む②

続きです。

意見交換のとき私も発言したろうかしらんと思いましたが、結構発言者が多くて自分では思いつかない面白い意見が相次いだので自分の感想はあとで町田さんに直接言えばいいか、と思って話をメモって聴くのに集中することにしました。

やはりいちばん言及されていたのは、前世が兎である女主人公の矛盾をはらんだ振る舞いです。愛を人ならではの弱さだと非難しておきながら別の箇所では何かを愛するという発言をしたり、本能的かつ平板な世界を是としているのに本能的とはいえない捩れた言動をしたり、言葉と意味を非難しながらも結局言葉と意味から逃れられていなかったり。この矛盾が何を意味するのかというところで、この物語は全て女主人公の妄想であるが故に破綻しており狂気を表現しているのだという意見、人として生きることそのものが矛盾とともに生きることなのだというメッセージを読み取った意見があがりました。あとはナショナリズムについての描写も取り上げられてて、政治的な視点で読み取る可能性も示唆されていました。ここは完全に私の中からは抜け落ちてた視点だったので興味深かったです。

「この話は人間視点でみるか兎視点でみるかで大分受け取り方が違ってきそうですね。どっちの視点で読んだ方がイメージが膨らむと思いますか。また、前世が犬でも豚でも猫でもなく兎が選ばれた理由も考えてみると面白いかもしれない」という町田さんのコメントがありました。兎は多産→好色→淫乱という連想から、強姦されたことをきっかけに気がふれ多数の男との性行為に耽る狂女が、自己の行状を正当化するために自分の前世は兎だと妄想するようになったのでは、という発言があってそういう捉え方もあるのだな、と思いました。その方は、この物語の構造について性描写・暴力描写・カタストロフ描写をしたいがために逆算されて作られた物語だと思う、なんてなことも言ってて面白かったです。

私は、兎は好色という連想から性描写の話が出しやすくなるし、兎は犬猫よりは人間と距離があるけどめちゃくちゃ人間の暮らしと離れているわけでもない絶妙な距離感があって人間を適度に突き放した視点から語らせるのにちょうどよかったんじゃないかな、と思いました。

 

しかし、町田さんは他の人の意見を拾って話を膨らませたりフォローするのがすごくうまくて流石でした。話し上手な人はやはり聞き上手ですね。

会が終わったあとも、同卓の方と少しお話できました。以前読んでいたという河合隼雄明恵 夢を生きる』という本の中に言葉で世界を切り分ける父性原理・全てを受け入れる母性原理という考え方が出てくるそうで、それと今回の物語を関連付けた意見を述べられていて、すごく面白かったです。

あとは、町田さんに直接今回の読書会の感想を言うことができました。普段自分で選んでは読まないタイプの生々しい描写てんこ盛りの短編集で初めは抵抗を覚えたけど深く読み込んでいくと意外と面白かったことを伝えました。あと、これだけは言わなきゃ!と思い、『宗教』と『沼』という作品が特に印象的だったこと、真の祈りや信仰の対象は崇高で手の届かないところでなく卑近で俗だったり下らなく見えたりするところにこそ宿り、だからこそ人間の切実な思いが表現されていると思いました…という内容のことを拙い言葉で吃りながら喋ったら丁寧に頷きながら「うんうん、そうなんだよ!それがまさに吉村萬壱の凄さなんです」と返してくれてめちゃくちゃ嬉しかったです。いっしょに写真を撮っていただき、握手もしてもらいました。感激です。去り際に、6月に名古屋であるレコ発ライブ観に行きます!新譜も楽しみにしてます!と言ったらニヤリと笑いながらちょっと気取った感じで「どうも。いま鋭意マスタリング中ですので」と答えてくださいました。カッコいいーーー(悶絶)

町田さんと話したい人や写真やサイン待ちの人たちがたくさん行列を作ってて町田さんは一人ずつ丁寧に対応してましたよ。紳士。とにかく浮かれすぎて緊張しすぎて、アンケート用紙書いたのに提出するの忘れてホテルまで持ち帰ってきてしまいました。

 

そうそう、今回来るのかどうか密かに気にしていた中学生の男の子も来てましたね。ちょっと今回の課題本が未成年には刺激的すぎるんじゃないか、神経に堪えるんじゃないかと勝手に心配していたのですが。その子がおずおずと「中学生でもこういう感じの過激な本を読んで良いものでしょうか…」と町田さんに訊いてて(やっぱり多少戸惑ったんでしょうね)、町田さんは年齢なんか関係ねえ!読んだったらええねん。ワイも若い頃からガンガン読んどったわ、みたいに答えてて

あとでNさんと場所変えてお茶しながらイヤイヤ、ダメでしょ

と突っ込んでしまいました。多感な年頃で読むにはけっこうキツい内容だと感じたので…。じぶんが中学生の頃って何読んでたー?私は赤毛のアンとか…みたいな話もしました。

Nさんは今回の本の内容はどうしても受けつけなかったそうで、分かりやすい狂気や汚辱を生々しく表現する手法ってはっきり言ってありふれてるし、一見正常で美しく見えるものの中に垣間見える狂気こそが人を惹きつけると思う。とのことでした。私はなんだかんだ言って今回の本は楽しく読めたのですが、Nさんの意見も分かります。とにかく、万人ウケしない本ではあると思います。

 

雨の大磯を駆け抜けて、平塚でNさんと話しながらお茶しました。

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駅前のコーヒーショップ。キャラメリゼしたチーズケーキと、あとウッカリして冷蔵ケースの電源プラグが抜けてたとかで「ぬるいチーズケーキは美味しくないから」と、アイスをおまけしてくれました。手相占いの案内があったり落花生の殻をコンクリートの床にばら撒いてたりして、独特な雰囲気のカフェでした。美味しかったし店員さんもいい人だったのでまた機会があれば行きたいな〜。湘南なんて年一回来るか来ないかですけどね。

夜はホテル泊で、スーパーでイチゴ買ってきて洗面所で洗って食べました。その日の夜はツイキャスしたけどなんか緊張してうまくいかなかった。

翌朝、だるいなーと思いつつまた4時間かけて松本に戻りました。ピース。