buried alive (生き埋め日記)

日々の生き延び・魂の暴れを内省的にメモる。

町田康さんの音楽ライブ@吉祥寺スターパインズカフェ

2018年6月22日金曜に町田康さんの音楽プロジェクト『汝、我が民に非ズ』のライブを聴くために吉祥寺まで行ってきたので、その時のことを申し上げる。

 

ずっと田舎住まいの私は都会の音楽ライブというものに出かけるのが初めてなので不安でたまらず、友人に

「いったい吉祥寺という街は安全なのか。パンクスにカツアゲされたり身ぐるみをはがされたりしないだろうか」

町田康といえばパンクロッカー。そのライブというと、やはりステージ上でギターをへし折ったり星条旗を燃やしたりするのだろうか」

と大真面目に訊いて笑われるなどした。

 

特急あずさに乗り道中iPodで音楽を聴きながら町田康の『東京飄然』を読んでいると、甲府で隣の席に乗り込んできた50、60代と思しきマダムが急にお菓子のビスコを目の前に差し出してきた。食べろということらしい。慌ててイヤホンを外し、礼を言いながらビスコを口の中に入れる。

もさもさする。口の中の水分が奪われる。目を白黒させながらビスコを嚥下し、改めてマダムに礼を述べると

ビスコ懐かしいでしょ。あたしよく食べるのよ、素朴な味がするから」

と笑った。

それからなんとなくそのマダムと雑談する雰囲気になり、甲府から立川までの約1時間とりとめのない話をして過ごした。どこの出身かとか、仕事はなにかとか、今まで住んだことのある土地とか、なにをしに東京へ行くのかとか。

あとはお互いが読んでる本を見せっこした。マダムは畠中恵の『つくもがみ貸します』を読んでいた。なんとなく暇つぶしに選んだ本で、好きな作家は塩野七生司馬遼太郎だという。塩野七生は実物はカンジワルイんだけど文章は面白いのよ〜、などという話が聞けておもしろかった。町田康のことは知らないと言っていたので、

「面白い作家です。こないだ甲府山梨県立文学館で井伏鱒二について講演をしていたので、聴きに行きました。きょうはその人が吉祥寺で音楽ライブをするので聴きに行くのです」

と説明した。

「あらいいわね。音楽ライブってことは、こう(こぶしを頭の横で振り上げるそぶりをしながら)ノリノリな感じでしょ?張り切っちゃうわね」

とマダムは応じた。

その後も本のことなどいろいろ話しているうちに降りるべき立川に着き、マダムは新宿まで乗っていくとのことだったのでお互いに話せてよかったですね、と挨拶し名前を教えあった。

「あたしはオオキって言います。ちょくちょくあずさに乗るから、また行きあう事もあるかもしれないわね」

「私はオサナイといいます」

「小さいに山と書いて、内かしら?」

「よくわかりますね」

という会話を別れぎわにかわした。

駅のホームに降りて歩きながら今降りた車両の窓の方を見たらオオキさんがこちらを見ていたので、手を振ってみせたら向こうも笑顔で手を振り返してくれた。

 

 

さて、なんだかんだで16時には吉祥寺に着いたが友人のNさんとの待ち合わせ時間である18時まであと2時間ある。

事前にネットで調べたり人に聞いたりして、待ち合わせまでは水タバコ屋やカフェをハシゴして過ごそうと決めていた。

まず水タバコ屋さんの「はちグラム 吉祥寺店」へ。

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パイナップルとキウイのフレーバーを頼んだ。水タバコ代プラスチャージ代を払えば、缶入りの飲料は飲み放題というシステム。いつか飲んでみたいと思っていた飴湯があったので飲んでみた。

あったかくてとろみがある甘い生姜味の液体である。気に入った。

水タバコ屋さんってなんとなく頽廃的な雰囲気あってドキドキしませんか。私だけ?店員のお兄さんは民族調のゆったりした服装がよく似合っていて、接客もフランクでこなれていて興味深かった。

説明とかも立て板に水って感じで流暢だし丁寧だった。

「いらっしゃーい。今日はどうする〜?◯◯のフレーバーね。りょうかーい。味が薄いとか濃いとかあったら言ってね〜。」みたいな口調が面白かった。

スーパーやコンビニとかの接客もこれぐらいのノリでいいと思うんですよね…。

で、はちグラムには漫画も置いてあってその中に大好きな『ヒストリエ』があったのでおお、と思って読み耽っていたらあっという間に2時間経っていて、

残念ながらカフェに行く時間はとれなかった。

うちにヒストリエ全巻あるのに…

それぐらいヒストリエは面白いです。

みなさん読みましょう。

 

 

ライブハウス・スターパインズカフェに着いて、ほうほう。これが話に聞くライブハウスか。と思って写真を撮ったりしてぼんやりしていたらNさんがやってきた。妙に笑い転げている。

私の佇まいとか風体がなんとなく滑稽だったらしい(首にスポーツタオルを巻いて、小さいサコッシュをぶら下げていた。ネットでライブに行く時の作法を自分なりに調査して身なりを整えたのである。泊まりの荷物を入れたリュックサックはあらかじめ駅構内のコインロッカーに預けてある。気合十分である。)

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整理番号順に並び、会場に通されてビックリした。会場にイスがぎっしり並べられているのである。

音楽ライブというものは観衆はみんな立った状態で行われるものだと思っていた。色んな音楽ライブに行き慣れているNさんの見解によると、町田康のファンは年齢層が幅広く、高齢の人もいるので疲れないように配慮しているのかも。とのことである。確かに客層は若そうな人から年配の人まで幅広かったように思う。

Nさんによると、高円寺ジロキチで以前行われたライブの際はスタンディングの席もあり、ノリのいい金髪?のパンクっぽい兄ちゃんが激しくノリながら演奏を聴いており町田康も「オオッ」という感じで喜んでいたそうだ。ちょっと見てみたかった。

そんな話を聞きながらカツサンド(美味かった)を食べハイネケンの瓶入りを飲んで開演前のひと時を過ごした。お店のスタッフの接客は行き届いており、まめに巡回して注文をきいたり客を席に導いたりしていた。

そうこうしているうちにライブの幕があがる。町田康は白のティーシャツに濃い色のジャケットを着て、ジーンズを穿いてたと思う。カッコよかった。

アンコールも含めて21曲ぐらい演奏してた。

 

 

どの演奏も良かったが、特に最初の3曲がノリノリな感じで私は気に入った。

2〜3曲連続で演奏して町田康の喋りがあってまた演奏にうつる、という流れであった。

町田康は歌詞を暗記しているわけではないのか、堂々とカンペを10枚以上(たぶん)めくって見まくりながらもノリノリで踊りながら歌うスタイルで、かなり面白かった。

歌詞は口語や古語が炸裂しており、声も叫んだり震わせたり囁いたり低音から高音まで自由自在で圧倒された。

歌いながら顔をくしゃくしゃにしたり笑ったりしてくるくる変化する表情にも惹きつけられた。

楽器の演奏陣の音も迫力があって、自然に体が動くような感じだった。Nさんが言っていたように、確かに座ってるよりは立って踊りながら聴いた方がより楽しそうである。

町田康は一曲おわるごとに

「ドーモアリガト」とボソッと言っていた。あと、歌唱中の情熱的な感じとトーク中のボソボソ話すかんじの落差が面白かった。

曲の合間のトークもボヤきあり告知あり日々の出来事の述懐ありで、町田節全開という感じで面白かったです。

あとで自分で読み返してニヤニヤしたいのでトークの内容も記録しときます。

 

「(氏が原作を手がける『パンク侍、斬られて候』の映画化を受けて) インタビュアーってほんとアホなことばっかり訊きよるんですよ、一言で映画を言い表してくださいとか。ほんで、雑誌にインタビューが載ったのをみると答えてるこっちがアホみたいに見えるんですよ。うまいこと編集されてるから。例えばシシャモについて語ってくださいみたいなくだらない質問をされて、文書でのやりとりだと特に語ることはありませんで切り上げられるけど、人間相手に対面してるとなんとか話をひねり出さなきゃいけないみたいな妙な気遣いが生じて頑張って喋ってしまう。結果として完成された記事を読むと、俺がひとりでシシャモについて熱心に語ってる変人みたいに見えてしまう」

「返信ハガキの宛名とか、やりとりするうちに“御”や“様”をなんべんも付け足したり消したりしてアホらしくてめんどくさいですよね。礼儀にがんじがらめにされてる感じが」

「ネット見てたら広告で “夏でもかぶれるニット帽” っていうフレーズがあって気になった。それを応用すると、暑くても飲めるコーヒー…それはアイスコーヒーか。いや、ぬるいホットコーヒーかな…」

「極厚インソールっていう商品を見かけたんですけど、インソールごときに極っていう字を使うの仰山すぎひん?極道の極ですよ?」

「創作レストランという看板を見て閃いたんですが、頭に創作とつけるとなんでも格好がつく気がする。だから僕らのバンドは創作パンクを名乗ります」

「新譜がもうすぐできます。本当です。ここにいる人の8割は信じてないと思うけど、いや、本当に出るんです。出ようとしている。神の国は近づいたみたいな感じで、もうすぐでるんです」

などなど、冗談なのか真面目なのか判りかねるどうでも良すぎるところに拘りまくったトークがとびだすところは『テースト・オブ・苦虫』シリーズに代表されるエッセイ群でおなじみの町田節で、お客はみな腹を抱えて笑っていた。

 

そんな中で特に心に残ったのが文学についての話。

「どうしたら小説家になれますか?とよく訊かれるが、はっきり言って僕にはわかりません。だけど、僕が自分の身を振り返ってこれだけはやってきたと自信を持って言えるのは、気に入った同じ本を百ぺんも千ぺんも繰り返し読んできたということ。読書ってね、本の数を競ったり速読にこだわったりする必要はないんです。好きな本が一冊あれば、それをなんべんもなんべんも読み返すことで拓けてくる新しい境地がある。」

私自身は数をこなす読書スタイルではなく愛読書を繰り返し読み込む読書スタイルなのをちょっと体裁悪く感じているきらいがあったのだが、この言葉を聞いてパッと目の前がひらけた気がした。

「僕は何もすることがなくて家に引きこもってた時期に、『神々のたそがれ』っていう地獄のような映画を1日に4回ぐらいみたことがあって(注:めっちゃ長くて白黒で、気がどうにかなっちゃいそうな映画らしいですね…)その時はもうほんとに気がおかしくなっちゃってね、ってそれはまあいいんですけどそういう風に同じものを何度も味わうことで見えてくる景色もあるわけですよ。

今日われわれのライブを観に来たみなさんも一回観たらもういいやなんて思わずに、何度でもライブを観に来てくださいということです!」

客席爆笑。

 

一番最後にはINU時代の名曲『つるつるの壺』を演ったのでみんな立ち上がって大喜びでした。さすがにこの曲はカンペ見てなかったですね。たぶん…

 

しかし、こういうライブの一度舞台からはけてアンコール×2回の流れっちゅうか様式美はなんなんですかね。一回で全曲やってスパッと終わってもいいのにね。とNさんと話したのは余談。

楽しかったー。

 

ライブ後べつの友達と会って飲んだのだが、やはり首にタオルを巻いた身軽すぎる風体と佇まいを笑われた。なんなんだ私は珍獣か?

好物のフライドポテトとピザを食べられて満足した。犬の話などで盛り上がった。

大好きなビジネスホテル泊もできたのでよかった

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武蔵境駅の雰囲気、かなり好きな感じでした。ロータリーの公園っぽいとこにベンチがたくさんあって仕事帰りのサラリーマンがポツポツ座ってスマホいじったりしてるとことか、謎っぽい建物の図書館とか。