ラジオ
夢の中に知っている人が出てくると、
「夢の中に出てきたよ」と本人につい言いたくなってしまう。
夢に出てきたのはまだ会ったことのない若い女の人で、私は夢の中でその人の引っ越し作業を手伝っていた。
新居は見晴らしのいいアパートの一室で、荷ほどきをする際彼女は真っ先に
ラジオを取り出してテーブルに置き、
スイッチを入れていた。
その周りには、ぬいぐるみが何人か。
後日、彼女が新居で実際に新しくラジオを買って聴いていると知って
さても現実と夢が符合したことだ、と妙に嬉しくなったけれども
畢竟こうしたできごとに特別な意味などはなく、
一切の出来事は淡々と流れていくだけで
人間だけが好きなように個々の出来事に意味づけをしているのに過ぎないのだと
思い、ひとりむなしく飲酒、午睡。
外は春の到来を告げるかのような嵐。
そろそろ亀も冬眠から覚める。